板前
割烹料理や日本料理、寿司店などで働く板前の仕事内容、必要なスキル、活かせる経験 、身に付くこと、平均給与、求人募集の未経験採用などについて紹介します。
板前の仕事内容
板前は料亭や割烹に勤め、日本料理を幅広く調理する仕事です。日本独自の味わいや調理法を駆使し、刺し身や煮物、焼き物など多彩なアレンジの料理を手掛けます。
懐石料理には前菜である「先付」から「椀物」「向付」「鉢肴」など決められた順番があり、それぞれに特有の調理法があります。すべてを一度に担当するわけではなく、決められた持ち場を中心に担当するため、持ち前の技術やオリジナリティをふるうことができます。
勤務先によっては季節のメニューや地場の味覚を取り入れるケースも多く、「味」だけではなく「素材」にもこだわらなければなりません。時期や原産地による素材の違い、味わいなどを追求することは、一流の板前に必要不可欠です。
一人前の板前としてデビューするまでには、洗い物や調理器具の管理・準備などを段取り良くこなさなければなりません。もちろんデビューした後もこれらの業務はついて回るので、要領良くこなしていく必要があります。調理だけではなくその前後も板前にとって重要な仕事の一つといえるでしょう。
新人として勤めはじめると、下働きをしながら自主的にトレーニングを行い、業務に慣れていきます。最初から難易度の高い調理を求められることはなく、現場に十分慣れてから本格的な板前としての仕事に入ります。
自分の持ち場によって担当する素材やメニューが異なりますが、どの勤務先でも伝統的かつお客様に喜んでもらえる味わいを重視しています。担当するメニューはすべて責任をもって調理しなければなりません。
基本的に与えられた業務は時間内で段取り良く進めていかなければならないため、職場内でのチームワークが鍵となる場合も。10代や20代の若いうちは下積みを重ねて作業手順を覚え、着実にステップアップを図っていきます。
必要なスキル
板前を目指す人の多くは未経験から始まります。実家などの手伝いをしていて、日本料理の調理法や味に慣れ親しんでいる人でも、勤務先によってはゼロからのスタートとなります。
下積み時代は段取りとチームワークを重視しながら、時間内に作業を進めていくスキルが必要となります。てきぱきと作業を進め、同時進行で業務にかかるマルチタスクのスキルがあるとスムーズです。また、新鮮な食材を扱う仕事のため、厨房や店内は常に清潔にしておかなければなりません。調理器具、自分自身の手指や服装などをこまめに掃除できる衛生観念の高さも、板前にとって必須のスキルです。
一人前の板前としてデビューした後は、提供する料理のメニューやオプション(1品料理)の組み合わせを考えるなど、クリエイティブな発想が求められます。食材の良さを引き出す能力だけではなく、お客様のニーズも汲み取らなくてはなりません。
一流ホテルや老舗料亭などでは調理後の盛り付けや器の選定、季節の花を使った彩りなどが重要視されることも多く、調理法や味だけではなく全体的な見た目を整えるスキルも磨いていく必要があります。
独り立ちをすれば一人でお店を切り盛りすることができますが、調理の仕事は基本的に一つのチームで分業をして進めていきます。責任が大きくなるにつれて、チームを牽引する力や若手の育成も任されるようになるため、自分自身の業務を進める一方で同じ仲間への気遣いやフォローアップなども行うことになります。
料理人は黙々と調理をこなしていくイメージがありますが、こまめに意思疎通をとって業務を回すコミュニケーション力も、板前に欠かせないスキルといえるでしょう。
活かせる経験
板前はさまざまな食材を手掛けるのがお仕事ですから、普段から料理をして自炊をしていると、その経験を現場でも活かすことができます。
特に日本料理や懐石料理は魚介類を多く扱うため、それらに関する知識や調理経験があると現場では重宝されますし、業務にも慣れ親しみやすくなるでしょう。
また誰とでもコミュニケーションがとれる人や、与えられたことをすばやくこなせる要領の良さも現場で役に立つため、接客業や厨房で働いた経験も板前の糧となります。高校生のうち(板前修業に入る前)に小料理店などでアルバイトを行い、そこで一定レベルの調理スキルを身につけてから修行に入るケースも少なくありません。
学歴が重視される仕事ではないため、調理の専門学校へ進学し基本を学んでから修行に入るのが一般的です。そこで同時にアルバイトでも厨房の調理担当として働き、スキルを二重に獲得していくといった経験があれば、現場での活躍も期待できるでしょう。
板前は日本料理ならではの繊細な味わいをメニューに落とし込むため、正しい味覚が必要です。そのため、自炊だけではなく一流のお店で食事をしたり、食べ歩きを楽しんだりといった趣味の経験もキャリアアップに役立ちます。
身に付くこと、キャリアステップ
板前は和食専門の料理人なので、和食に関する知識が豊富に身につきます。春の魚や野菜、夏には夏の味覚、秋から冬にかけて旬を迎える食材など、季節ごとの味わいに慣れ親しんでいき、それらを組み合わせてオリジナルのメニューを組み立てることもできます。
繊細な手先の感覚が身につけば、見た目にも美しいメニューを表現することが可能になり、そのスキルをもって一流のホテルや老舗料亭に就職することもできます。実力主義の世界ではありますが、近年では和食に洋食を組み合わせたメニューなどオリジナリティを重視するケースも増えてきており、自分の個性や感覚をうまく表現できるようになれば、海外での就職や企業とタイアップしたメニュー作りが任される可能性も。
はじめは見習いとして修行し下積みを続けますが、慣れてくると調理をこなせるようになり、年齢とともに調理場の責任ある立場を任されるようになっていきます。待遇については職場環境により異なりますが、和食は海外でも人気が高まっているため、日本を飛び出して海外の飲食店やホテルなどに勤務するケースもみられます。
平均給与
板前の平均給与は25万円前後ですが、勤め先や経験、能力、その他の待遇の有無により大きく変動します。見習い期間中は十数万円程度と低く設定されるケースも多いのですが、経験を積んだベテランの板前になると年収500万円以上になることも。
勤務先が外資系である、能力ごとに評価される、企業などからのオファーを受けるといったケースでは、収入アップが期待できます。また、独立してから自分の店が持てるようになると、店舗の売上によって平均年収も大きく推移します。
年齢別の平均年収は以下のようになっています。
- 20代前半:200万円程度
- 20代後半:230万円程度
- 30代:300万円程度
- 40代以上:400万円程度
参考サイト
- Career Garden:「板前」とは
未経験の採用
板前は誰もが未経験の状態から下積みを経てステップアップしていくお仕事で、経験がほとんどなくても調理の専門学校などへ通って基礎を習得すれば現場に入ることができます。
未経験者でもアルバイトなどを経て腕を磨くことができますし、下積み時代に多くのことを吸収していけば、スムーズにステップアップをしていくことができるでしょう。
当仕事経験者からの口コミ
- やりがいのあるいい仕事です/50代男性
調理師の免許を持っていますが、初めは未経験からのスタートで慣れないことも多かったです。幸い、職場の先輩が丁寧に教えてくれたので仕事になじむのも早く、周りとの意思疎通もスムーズで毎日があっという間でした。調理を任されるようになってからしばらくは緊張の日々でしたが、責任感をもって作る食事はやはり気合いが違いますし、「もっとお客様に喜んでもらおう」と思いながらいつも調理に臨んでいます。 - 自分の店を持つのが夢/20代男性
板前としてまだまだ経験が浅いので、これからもっと腕を磨いていくつもりです。普段は集中して仕事にあたっていますが、仕事の内容によって集中度を切り替えてうまくオン・オフを使い分けるようにしています。将来は自分の店を持ち、伝統的な和食を踏まえた創作料理を提供できるようになりたいです。